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不妊治療と発達障害

最近、大人の発達障害という言葉をよく聞きようになりました。
これは、発達障害は一般的に乳幼児から幼児の頃に発症するという定義があるためですが、最近は幼少の頃は目立たなかった(うまく対処できていた?)が、思春期、大人になって対処できずに(実は)「発達障害」と診断されることが増えてきて、大人の発達障害という言葉を耳にするようになったのでしょう。

子供の頃に発達障害の診断がある方や、いわゆる大人の発達障害をお持ちの方が不妊治療を取り組んでいるケースはあります。発達障害の理解がないと、ただでさえ辛い不妊治療がよりつらくなるため、簡単な紹介と対処法をお伝えします。

目次

発達障害とは

発達障害の定義

日本では、発達障害者支援法において「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。(文部科学省サイトより。リンク参照)

発達障害の原因は脳の機能のアンバランスさ

アメリカでは1980年に精神医学会が、精神障害の診断基準である「DSM-Ⅲ」を作成し、「注意欠陥障害」が採用され、発達障害者に見られる「不注意」や「多動」、そして「衝動性」などが、脳の機能障害がもたらすものであると明確にされ、脳の機能のアンバランスさが影響していることがわかりました。

日本では、2002年に文部科学省が通常学級にいる発達障害児の存在を調査し、当時の調査でクラス全体の6.3%(1クラスに1〜2人の割合)に、発達障害のある子がいると発表されました。その3年後の2005年に「発達障害者支援法」が定められました。

(参考文献はリンクを参照)

親の育て方が悪いからではありません

いわゆる「困った行動」をしてしまう子どもたちを育てる親に対して、親族や学校の先生などが「お母さんの育て方がなっていない」「しつけが間違っている」「愛情が足りていない」などと指摘し、「親の育て方」に原因があるようなことが主張される時代がありましたが、「発達障害」は生まれつきのもので、親の育て方など後天的なものではありません。

ただ、周囲の環境、関わり方により「二次障害」につながる可能性が高いので、家族をはじめ周囲の正しい理解と関わりが必要です。

不妊治療と発達障害

実際に不妊治療をされていて、発達障害をお持ちかな?と感じる事例を3つほど紹介します。その事例も本人は発達障害を持っているという認識はありません。

また、発達障害の診断を受けるほどではないけれど、その「傾向」がある方も多いのです。そのような方々には不妊治療生活がほんのちょっと楽になる対処法はありますので、参考にしていただければと思います。

スケジュールはわかっているのに、忘れたり、間違ったりする

不妊治療で大変なことの一つに、スケジュール管理です。
スケジュール通り(医師が言う通り)に薬を飲んだり、受診したり、性交渉とったり、ですよね・・・これは本当に辛いです。子供が欲しいだけなのに、とてもプライベートなことなのに、医師の言うとおりにしないと授からないから辛い気持ちを抑えて、皆頑張っています。

そんな風に気持ちを割り切り、子供が欲しいと思っているのに、それなのに大事な診察の日時を忘れたり、間違えたり、そこまでないにしても電車を乗り間違えて遅刻してしまったり・・・

薬を飲むタイミングについては表をもらって壁に貼ってあるのに、すっかり忘れたり、勘違いしたり・・・病院に相談すると、それでは今回は採卵はキャンセルしましょう、とあっさり言われた・・・自分が悪いのはわかっているけど、なんでこうなっちゃうんだろう、と途方にくれている方、いらっしゃいます。

この場合、想定できるのはADHD、もしくはADDという状態で、集中力が持続しない、意識があちこち飛んでしまう、ちゃんと考えているけど次の考えが浮かんで行動してしまうと、最初に考えていたことをすっかり忘れる、などあります。

こういったスケジュール管理、勘違いを防ぐには、スマホのアラームやリマインド機能、夫(スケジュール管理が大変なのは女性だから)とスケジュール管理の共有、あとは自分はもしかするとADHDかADDかもしれない、ということで自分の特徴を理解する、意識することです。

自分についての理解や意識が高まると、あ~どうりでうまくいかなかったんだ!と納得&安堵するため、心(脳)に余裕ができて、ミスが減ります。

妊活や不妊治療で必要なことはちゃんと調べて実行しているのに結果がでずに辛い

早く妊娠して、出産して、育児したい、お母さんになりたいから、病院で言われたことはちゃんとやるし、自分でもネットで色々調べてちゃんと実行している。でも、結果がでない・・・頑張れば頑張るほど、結果が出ないで疲れ切っている。この上、どうすればいいのでしょう?ということでカウンセリングに来られる方もいます。

このような場合、どんなことをどのように頑張っているのかを具体的に聞きます。
診察内容をノートにぎっしり書いていて、それを見せくださるのですが、
見ると、あちこち書き込みもあって、どこに何が書いてあるのかわかりづらく、
ある日の診察内容について書いてあるすぐその下には、「花」と書いてあり、それはどういう意味ですか?と聞くと、「なんだったっけ?」というお返事・・・

赤線を引いていたり、四角でかこっていて大事なところは印はあるのですが、
なぜそれが大事なのかを即答できません・・・

また、移植の前は体調を整えるために「うな重」を食べた、と言いますが、
よく聞くと、それまでの1週間くらい忙しくてコンビニ弁当ばかりだったから(直前は体に良い高価なもの?)という理由のようですし、
運動している、とおっしゃるのですが、よく聞くと24時間フィットネスで夜10時頃に行って1時間くらい汗を流して
寝るのは午前1時近いとか・・・

お仕事もされていて、時間に制限があるのは理解できますし、すごく頑張っていらっしゃいますが、どうも的が外れている、という感じ。
目的目標を作り、それを実行する能力は非常に高いのですが、それらを行う意味が偏っていたり、柔軟性に欠けていたりしています。

このような場合、ASD、もしくはASD傾向にあると考えられることもありますが、診断名がつくほどではなくても、こだわりが強い場合は上記のようなパターンはみられます。

そんなときはまずは、頑張っていることをねぎらいますが、一つ一つを行う意味について理解を深めることが大事です。たとえば運動するのは血流をよくするためではありますが、睡眠も血流に関連しますので、どのように運動すれば一番効果的なのかを一緒に検討することで、本人の頑張りが報われたり、新しく何か取り組もうとするときに偏った取り組み方にならないようにできます。

パートナーに発達障害がある場合

不妊のカウンセリングのクライエントは、8割ほどが女性ですが、不妊の話をしているうちに夫とのコミュニケーションの問題、そして実は発達障害を持っている、あるいは発達障害ではないか?という相談になることがあります。

普段は優しいけど、「スイッチ」が入ると感情的になる(声が大きくなったり、正論を並べて正しいのは自分で、悪いのはあなただ、と言われるなど)、仕事が忙しい時は全く会話ができず、部屋に閉じこもっている(それ自体は理解はできるが、ちょっとした音にも敏感になりこちらも安まらない)、移植した後だから安静にしたいのに、急に部屋の模様替えをすると言われ、ゆっくり休めないなど・・・

カサンドラ症候群という言葉もあるのですが、パートナーが発達障害の場合も、発達障害の理解が大事です。

カウンセリングをご利用ください

発達障害かどうかもわからないけど、何かしら生きづらさを感じたり、頑張っているのにうまくいかない、これまでは問題なかったのに、不妊を経験して何か違和感を感じている、などがあればぜひカウンセリングをご利用ください。

発達障害の診断ができるのは大人であれば精神科や心療内科の医師になりますので、私のような公認心理師、もしくは臨床心理士は「診断」はできませんが、その疑いがある、もしくは今の状態は発達障害によるものではなく、一時的なもの、という判断はできます。

診断を希望する場合は、医師がいる機関でのカウンセリングもしくは診察となりますが、それほどは困ってない、ということなら公認心理師や臨床心理士が行っているカウンセリングで相談することも可能です。カウンセリングで発達障害の傾向があるにしても、ないにしても、今どうすればあなたにとって一番よい方向になるのかを一緒に検討します。

ガーベラ不妊相談室は不妊や生殖を専門にしたカウンセリングルームですが、発達障害についてもサポートできます。ちょっとした疑問や質問でも大丈夫です。
お問い合わせフォームをご利用ください👇

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