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AIDを考えるなら

AID(非配偶者間人工授精、つまり精子提供によって子供を授かる方法)を検討している方々への、心理的なサポートを伝えます

目次

AIDについて知る

AIDがどのような治療法なのかを知り、それによってどのような悩みが生じるのかをお伝えします

AIDという治療法

AID(非配偶者間人工授精)とは、夫が無精子症などのときに「夫以外」の精子を使って人工授精させる方法です。現在日本で行なわれている、唯一の配偶子提供による生殖補助技術です。

AIDは1948年に初めて実施されてから、これまでに1万人以上の赤ちゃんが誕生したと言われています。しかし現在ではART(生殖補助技術)の進歩により、無精子症や乏精子症でも「顕微授精(ICSI)」により妊娠を得られるようになり、AIDは「絶対的無精子症」に限られるようになってきました。

AIDの実際は「精液を通じての感染」「AID児同士の婚姻」「法律の上での親子関係」「出自を知る権利」など、いくつかの問題点も残されています。

AID→ artificial insemination with donor semen

以上AID(非配偶者間人工授精)-不妊用語辞典より引用(リンク参照)

AIDによる心の負担

AIDという治療法を知れば、それはおのずと何かしらの心の負担を伴いやすいと想像できますよね。

AIDを行うということは男性に精子がないという状態なので、そこでまずは心が傷つきます。

それでも子供を望むので提供精子による妊娠、出産を選択しますが、お子さんとの遺伝的な関係が男性とは全くない、というのは子供をもつ、という従来の価値観やイメージとは違うことが多いですよね。

さらに、今はお子さんへの「告知」がお子さんの成長を考えると推奨されてますが、AIDを提供する施設でどこまでそのサポートができるかというと難しい部分がありますし、そもそもそれはカップルの問題、と全くサポート体制がないところもありますし、あるいはカップル自身が誰にも言えない秘密、として抱えるケースもあります。

家族内に秘密があることは、家族にとって健康ではないのです。でも、頭でわかっていても気持ちではどうしても行動できない、という思いもよくわかります。
なぜかというと、子供が欲しいという気持ちは皆、自然とあるのに、自分(達)が自然でないことを
受け入れるのがとても辛いからです。

自分たちが「自然ではない」「普通ではない」ことを受け入れ、それでいいんだ、それでも満たされるんだ、それでも幸せだ、と感じることができれば、そこに健康な家族が存在するのだと思います。

AIDで悩むのは

AIDで具体的に悩むポイントをお伝えします。

子供と似ていないこと

当然ですが、父親とお子さんは遺伝的につながりはないので、似ていません。

周囲は通常遺伝的につながりのあるお子さんを授かったと思うので、
「あら、お母さん似かな?」
「大きくなればお父さんに似てくるよ」

あるいは「似てないね~」とダイレクトな反応もあるでしょう。

勿論遺伝的に似ないことは承知の上でのAIDではありますが、
想像以上に周囲から似てる似てない、の言葉を浴びることの覚悟は必要です。

そして、自分たち夫婦は父親と子供が「似ていない」ことは(どうにか)受け入れることができても
お子さんにもその言葉が届きます。
その時にどうするのか?
これは告知にもつながることなので、AIDを選択する時には検討して欲しいポイントです。

真実告知

AIDを行う施設でお子さんへの真実告知について
カウンセリングなどが行われているところもありますが、
全くないところもあります。

全くないところは、倫理的に問題があると私個人は思いますが、
現実にそういうところはあるので、
全くないところでAIDを選択される方にはぜひ真実告知について理解していただきたいと思います。

真実告知をしていなくても
お子さんがいずれ自分が父親と遺伝的につながっていないことを知る確率は
かなり高いです。
なぜかというと、人間だからです。
上記したように、似てないな?は勿論、何かこの家族に秘密がある、ということを子供は敏感に感じます。
そして、真実を知る機会は、他の危機的な状況と同時に起こるケースも多いのです。
たとえば、父親やお子さんが大けがをしたり、大病を患ったとき。
大けがや大病だけでも危機的なのに、
同時に父親と子供は血縁にないことを知るとすれば
それは想像を超える危機でしょう。

そうなることを防ぎたいのであれば
真実告知を早い段階で行うことは推奨されています。
3歳くらいからお誕生日のタイミングや父の日母の日のタイミングなどで
お父さんとお母さんだけでは子供を授かることができなかったから
お医者さんに頼んであなたが生まれるようにしてもらったんだよ、
というレベルので良いのです。

いきなり、匿名の人の精子であなたは産まれた、という説明は不要です。

真実告知をすることで
お子さんが少なくとも秘密のある家族をもつことはなくなります。
秘密のある家族は、健康とは言えません。
家族が秘密をかかえながら家族全員が幸せになることは、とても難しいのです。

真実告知については後述の参考文献をご覧ください。

男性不妊であること

AIDを選択され、無事お子さんを授かり、
念願の育児を行い、真実告知についてもきちんと理解し、実施している家族も多数いるでしょう。

そのような家族の場合は、AIDを行うことで男性不妊が「解決された」と認識しないことが大事です。
男性も女性も、子供がいるんだからもう大丈夫、と思うかもしれませんが、
男性不妊である事実をきちんと受け止め、悲しみ、男性不妊であることを
男性は自身の一部として受け入れ、
女性は男性不妊を受け入れた夫(パートナー)を受け入れる、
作業が必要です。

おそらく「似ていない」お子さんがいつもそばでいれば
男性不妊であることを忘れることはないと想像しますが、
この幸せを壊しなくないから
なかったこと、
蓋をする、
というような心理が働くと、そこは無理があります。

この幸せを心の底から満喫したいのなら
男性不妊であったことを男女ともにしっかり悲しみ受け入れる必要があります。

サポート体制が整っていない

大きなAIDで悩むところ、検討して欲しいポイントをあげましたが、
それが夫婦二人でできればいいのですが、
そう簡単なことではありません。

むしろ第三者がいたほうが決断しやすい選択肢でもあります。
感情的にならず、客観的な事実を提供してくれるサポート体制。

これが本当に少ないのです、日本には。
そこも悩ましい点です。

AIDで出産した終わり、ではないのです。
出産してお子さんが人生を全うするまで続くのです、AIDという選択肢は。
場合によっては、そのお子さんのお子さん、そしてそのお子さんと永遠に続くのです、AIDは。

そう考えると、
夫婦二人だけで決められることではないのです。
でも、現実的には決めないといけない、決めることができる・・・

サポートを求めない夫婦もいらっしゃいます。
でも、サポートが欲しいのにそれが手に入らない夫婦に、少しでもお役にたてればと思っています。

決断を促す方法

サポート体制があれば必ずご利用ください。
サポート体制がない場合は、以下をぜひ参考にしてください。

生殖物語の書き換え

このブログで何度も出てくる生殖物語(リンク参照)

AIDという選択肢はまさに生殖物語の書き換えです。
書き換えの途中だと思いますが、
自分の、そしてパートナーの二人度も出てくる生殖物語(リンク参照)

AIDという選択肢はまさに生殖物語の書き換えです。
書き換えの途中だと思いますが、
自分の、そしてパートナーの二人それぞれの生殖物語にAIDを選択する過程を書き込めるか、
それが決断を促す一つになると思います。

お子さんの幸せを最優先にする覚悟

もう一つ決断を促すポイントは
お子さんの幸せを最優先にできる覚悟をもってAIDに臨めるか、
です。

お子さんが幸せであることが自分たちの幸せ、と夫婦が断言できるのであれば
AIDはとてもよい選択肢になります。

自分の幸せのためにAIDを選択するのであれば
その先に本当の幸せはあまり期待できないでしょう。
なぜなら今の幸せしか、考えていないからです。

AIDという選択肢について必要かつ正確な知識を得ること、
それを理解して自分がどう思うのか、
パートナーがどう思うのか、
そして夫婦、カップルで生まれてくるお子さんの幸せが自分たちの幸せだよね、
と断言できるのであれば
様々な困難が起こるかもしれないけど、AIDを選択したことは後悔しないでしょう。

参考文献

信頼できる相談先があればぜひご利用ください。ない場合や、正しい情報が欲しい場合は以下の文献をご利用ください。

〇「大好きなあなただから、真実をはなしておきたくて 精子・卵子・胚の提供よりうまれたことを子供に話すための親向けガイド」オリビア モンツチ著 才村眞理訳 帝塚山大学出版会 2011 

〇「精子提供:父親を知らない子供たち」歌代幸子著 新潮社 2012

〇Family Building AID ~家族になるということ~ 発行/作成 すまいる(親の会)←リンク参照

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