ヤマアラシのジレンマ
こんにちは、心理士の小倉です
さて、今回は3年前ですが、その際の日本生殖心理学会の講演について。
この学会は生殖心理、
つまり不妊の心理について一番多くを学べる学会ですが、
毎回著名な方の講義も多く、本当に勉強になります。
この方~
ご存じです?
精神科医の香山リカ先生です。
いろいろ本当に深い話をしてくださいましたが、その中でも
ヤマアラシのジレンマ
の話はそうそうそう~!!!!とうなずきっぱなしでした。
どういう話かというと
↑こんな感じですが、
おしりのほうにある白いつんつんが
威嚇などするときは全部針山のようになる動物です。
このヤマアラシが寒いので他のヤマアラシとくっついてあたたまろうとするのですが、
くっつきすぎるとお互いの針が刺さって傷つけあう、というお話で、
人間もお互いの距離感を感じ取り、その針の長さが調節できるといいね、
という意味もあるのですが、
学会では不妊の当事者同士、というのは最初はお互い不妊だから、
ということで仲間意識を持つのですが、
だんだんお互いのことがわかるとその違いも見えてきて、ひとくくりに「不妊の人」と
一緒にされることに抵抗があるようだ、というお話をされました。
せっかくお互いあたたまろうとしたけど、結果的に傷つけあう、
ということがどうもあるらしい、というお話。
そうなんですよね。
不妊の話をこれまでの友人には話せない。やっと話せる不妊友達、を見つけたけど、
私は子宮筋腫、友達は男性不妊、私は自分が原因だから罪悪感を感じる、
でも友人は夫を責めるにも責められない気持ち、
でも私にしてみれば、
精子さえなんとかなれば妊娠できる友人がうらやましい・・・
友人なのに、なんか、重たい関係。
同じ不妊だけど同じじゃない・・・などよく聞く話ですよね。
不妊で悩んでいる人に、だったら自分の針の長さを調節したら?
と言うのは簡単ですが、酷すぎます。
私が思ったのは、
つまりヤマアラシは寒いから寄り添いたいんだよね?
だったらそんなにお互いが近寄らなくてもそこそこスペースがある
暖かい場所=支援・サポートを提供すれば、
あるいは作っていけばいいのかな、と。
これは不妊で悩まれている方たちだけのことではないと思いますが、
そこそこ元気な人は自分の針の長さ調節はできますが、不妊やその他、
人生で大きな出来事がおこってこれまでの対処方法ではどうにもならない方たちには、
もう針の長さ調節をする元気もありません。
だからお互い寄り添おうとすると傷つくこともあります。
だけど、適度に寄り添える場所を社会全体で作れるようにできれば、と思う今日この頃です。