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不妊を経験して里子・養子縁組を考えるなら

不妊治療をしたけれども実子を授かることが難しい、授からなかった場合、里子や養子を迎える選択が最近は増えています。その経緯などを心理面を含めてお伝えします。

目次

里親制度・養子縁組について

現在の日本では里親制度や養子縁組は様々な理由で行われていますが、今回は不妊を経験し実子を育てることが難しい、できないご夫婦のための、子供を育てるという意味での里親制度、養子縁組について、お伝えします。

里親制度とは

里親制度は、何らかの事情により家庭での養育が困難又は受けられなくなった子ども等に、温かい愛情と正しい理解を持った家庭環境の下での養育を提供する制度です。

1.(a)特定の大人との愛着関係の下で養育されることにより、
自己の存在を受け入れられているという安心感の中で、自己肯定感を育むとともに、人との関係において不可欠な基本的信頼感を獲得することができる、
2.(b)里親家庭において、適切な家庭生活を体験する中で、家族それぞれのライフサイクルにおけるありようを学び、将来、家庭生活を築く上でのモデルとすることが期待できる、
3.(c)家庭生活の中で人との適切な関係の取り方を学んだり、身近な地域社会の中で、必要な社会性を養うとともに、豊かな生活経験を通じて生活技術を獲得することができる、
というような効果が期待できることから、社会的養護においては里親委託を優先して検討することとしています。

里親制度としては、養育里親、専門里親、養子縁組希望里親、親族里親の4つの類型があります。

以上「公益財団法人全国里親会:里親制度とは」より抜粋(リンク参照)


この中で不妊を経験して子供を育ててみたいというカップルは
主に「養育里親」「養子縁組希望里親」を検討されます。

「養育里親」は原則として0歳~18歳までの要保護児童を一定期間養育する里親です。

「養子縁組希望里親」は養子縁組によって子どもと法的な親子関係を結ぶことを前提として養育する里親です。

里親になるためにには全国の児童相談所で登録、研修が必要です。
民間では行っていない点が養子縁組と異なります。
児童相談所はお住いの地域の自治体(区役所、市役所など)に窓口があります。

養子縁組とは

養子縁組は、法的な親子関係を構築するもので、子どもがいない一族の家名や財産の承継、実親を亡くした子どもの養育、相続権の付与、相続税対策など、さまざまな目的で行われています。養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組という2種類があり、それぞれの目的や条件に応じて使い分けられています。

(1)養子縁組の種類
養子縁組とは、血縁関係のない子どもとの間に法律上の親子関係を構築する制度のことをいいます。養子縁組には、以下の2種類のものがあります。

①普通養子縁組
普通養子縁組とは、実親との間の親子関係を維持したまま、養親との間で新たに親子関係を生じさせる制度のことをいいます。普通養子縁組をすることによって、養子は、実親と養親の2組の親を有することになります。一般的に「養子縁組」といわれているのは、この普通養子縁組のことを指します。

普通養子縁組をした養子は、2組の親を有することになりますので、実親と養親の双方の法定相続人となる権利を有しています。

養親と養子は互いに扶養義務を負います。養子が未成年者である場合は、養子の親権者は実親から養親になります。

養子は養親の戸籍に入り、養親の名字(氏)となります(結婚時に氏を変更した養子は除かれます。)。続柄には養子、養女と記載されます。実親の名前も記載されます。

②特別養子縁組
特別養子縁組とは、実親との親子関係を断ち切って、養親との間で新たに親子関係を生じさせる手続きのことをいいます。普通養子縁組と特別養子縁組の大きな違いは、実親との親子関係を終了させる効果があるかどうかという点です。

特別養子縁組は、いろいろな事情で実の親と生活ができない子どものために、新しく養親子関係を構築し、温かい家庭で、子どもの健全な養育を図ることを目的として設けられた制度です。

特別養子縁組した養子は、実親との親子関係が終了しますので、実親が亡くなった場合でも、実親の遺産を相続する権利はありません。実親の扶養義務もなくなります。養親と養子の間で相続権、扶養義務が生じます。

養子は養親の戸籍に入り、養親の名字(氏)となります。続柄は長男、長女と記載されます。実親の名前は記載されません。

(2)養子縁組の条件
養子縁組をするためには、以下の条件を満たす必要があります。

①普通養子縁組ができる条件
養子が養親よりも年下であること
養親が20歳以上、もしくは婚姻していること
養子が養親の叔父や叔母などの尊属でないこと
養親になる人が養子になる人の養親になる意思があること
養子になる人が養親になる人の養子になる意思があること
後見人が被後見人を養子にするときは家庭裁判所の許可を得ていること
婚姻している人が未成年者を養子にするときは夫婦一緒に養親になること
養親や養子になる人が婚姻しているときは配偶者の同意を得ること
養子になる人が未成年者のときは家庭裁判所の許可を得ていること
養子になる人が15歳未満の場合は、法定代理人による本人に代わる縁組の承諾があること
養子縁組届を提出していること
②特別養子縁組ができる条件
養親となる者から家庭裁判所に審判の請求をすること
実親の同意があること(実親が意思表示できない、又は父母による虐待、悪意の遺棄などがある場合は不要となりうる)
養親は配偶者のある者(夫婦)であり、夫婦が一緒に養親になること
家庭裁判所への審判の請求時に、養子が15歳未満であること
養親のうち少なくとも一方が25歳以上であり、もう一方が20歳以上であること
実親の監護が著しく困難または不適当であって、子どものために特別養子縁組が特に必要であること
養親となる者が養子となる子どもを6か月以上監護していること
家庭裁判所が特別養子縁組の成立を審判で決定すること

以上「弁護士JP:養子縁組とはどんな制度? 里親制度との違いや条件について」より抜粋

里親との大きな違いは、法的な関係があるかないか、ということなります。
そのため、とくに特別養子縁組の場合、手続きがとても大変ですし、養子縁組希望里親に登録したとしても
なかなか養子縁組が成立しないケースもあります。
そこで民間団体による特別養子縁組が日本全国にありますが、
民間ですのでそれぞれの団体の理念もあるのでそこも理解・納得の上てかかわっていくことが大事にです。

不妊治療を経て里子、養子を迎えるためには

色々な理由で里子を迎えたい、養子を迎えたいという思いがあると思いますが、ここでは不妊を経験したうえで、里子・養子を迎えるために検討していただきたい心理についてお伝えします。

不妊を受け入れ十分に悲しむ

不妊を経験するということは、実子を望んだけれども思うように授かっていない、ということです。

不妊治療をしたけれど授からない、できることはやったけど授からない、あるいはいまだに授かってない、
でも子供が欲しい、育てたいという時に里子や養子を考えることになることが多いでしょう。

その時に一番大事なのは、自分達カップルは不妊を経験していることを受け入れることです。

不妊の経験は本当に辛いものです。それを
「なかったこと」
「補ってくれるもの」
「代わりになるもの」
として、里子、養子を迎えるとお子さんとの関係は健康なものにはなりません。

自分たちが不妊を経験した悲しみ
実子を望んだのに授かならい悲しみ
は十分に感じる必要があります。

不妊を受け入れ、その悲しみに向き合う中で
次に自分たちができること、幸せになる選択肢として里子、養子を検討することが大事です。



里子や養子はあなたの実子の代わりではない

上記したように、悲しみから逃れるための里子や実子であってはいけません。

なぜなら、実際に里子、養子を迎えたときに
その子は実子ではないことにようやく気づき、
実子でないなら愛せない、という悲劇が起こり、
迎えたお子さんも不幸、
カップルも不幸になるからです。

不妊を経験したカップルにとっての実子は
「授かるはずだった赤ちゃん」なのです。
授かるはずだった赤ちゃんの代わりになるものはありません。
授かるはずだった赤ちゃんが来なかったことをきちんと悲しみましょう。

そうすれば、迎えたお子さんを迎えたお子さんとして愛することができるでしょう。
それが新しい家族を健康的に作ることになります。

生殖物語の書き換え

新しい家族を作ることが里子、養子を迎えることになります。

これは生殖物語の書き換えです。
本来抱いていた自分の家族のイメージや理想とは違うけれど
子育てをしたいという願いをかなえるための書き換えが必要になります。

生殖物語についてはリンクを参照してくださいね。

そして、自分の生殖物語だけではなく、パートナーの生殖物語の書き換えも必要です。
実子ではない子供を育てる、という書き換え、それによって自分達がより幸せになれる、
日々の生活を豊かにする、という物語が綴れるかどうかを検討してみてください。

里子、養子を迎えた後はどうなる?

不妊を経て里子、養子を迎えたらどのようなことが予想されるのか?あるいは、実際に起こっているのかをお伝えします。

新しい家族を作っていく

里子、養子を迎えることで、まずは子育てが始まります。
母乳ではなく、ミルクで育てることも生殖物語の書き換えになるかもしれません。

もし、迎えたお子さんの年齢が高ければすぐにでも幼稚園、保育園の手続きも必要でしょう。
その場合、周囲への告知も慌ただしいものになりますが、
そうしながらも家族となっていきます。

迎えた当初は予防接種の署名も実両親のものが必要なケースもあります。
そういったストレスを抱えながらも目の前にいる子供の成長を見ることに
幸せを感じるか、あるいは想定とはやはり違っていたが
満たされる部分があるなど、
喜びだけではない葛藤を抱えながらも
家族ってこういうことなんだ、
作り上げていくものなんだ、と
実感する日々になると思います。

これは自然に子供を授かった家族にあまりない感覚です。
子供は結婚したらできるもの、いるもの、それが当たり前、
だから家族を作る、という感覚はないことが多いでしょう。
家族を作る、という感覚があると、何かトラブルがあったときも
修正すればいい、という思いになりやすく、その後の家族の成長につながりやすいのです。

家族は自然とあるもの、どうにもならないもの、という感覚だと
トラブルが発生するとどうすればよいかわからず、悪い方向に向く可能性があります。
そういう意味でも、
家族は作っていくものという感覚を教えてくれる里子、養子の存在はとても素晴らしいと思います。

真実告知の難しさ

里子、養子を迎えることの難しさの一つに真実告知があります。

迎えたお子さんが乳児であればなおさら告知をする必要があるのか?
と思う瞬間があるかもしれません。

一方で、お子さんが幼児の時に迎えたときはある程度子供は自分には実の親がいる、ということを
知っているのですが、詳細を知っていることは少ないです。
そこで、詳細をどこまで伝えるのか、がとても難しいケースがあります。

つまり、里子、養子であることは実親が育てることができない、と判断されているわけですから
いろんな事情があり、その事情が子供にとってはかなり辛い事実になりえます。

当初はすべてを包み隠さず伝えようと思って子供を迎えたが、
実親の実状を知って(裁判の過程で知ることが多いようです)、この事実を子供に伝えることを躊躇する話を最近聞きます。

以前は、真実告知も里親、養親に任せていた部分もあり、真実告知が大事である、という観点もあまりなかったため、表面的な告知や、場合によっては嘘の内容の告知もあったのではないかと想像します(あくまで子供のために)。でも、現在は真実告知が子供のアイデンティティに関わる、精神的な成長に大事であるという考えから、
真実告知に真剣に取り組むカップルが増える中、果たしてどこまで真実告知が必要なのか、あるいは本当に真実告知は必要なのか、という問題に直面しています。

このあたり、里親会や養親会があるので、様々なサポートやアドバイスがあるかと思いますが、私の見解としては不妊を経験している夫婦だからこそ、真実告知をしながらも、子供が実親の実状を知ることで傷ついたり悲しんだとしても、あなたをすべて受け入れるよ、というメッセージを発せられるのではないかと期待しています。

縁があってあなたと出会えたことは私達の幸せにつながっている、実子に会えなかったけど、あなたに会えたことをあなたの実両親に感謝している、という言葉をかけることができるなら、迎えたお子さんの悲しみや苦しみは癒されるでしょう。そして、それがどんなにこの社会に貢献しているかを、知っていただけたらと願っています。

子供のアイデンティティや実親との関係

真実告知は、迎えたお子さんの精神的な成長、とくにアイデンティティと呼ばれる、自分は何者か、という部分にとって大切です。

自分は実両親に育ててもらうことはなかったが、里親、養親から愛情を受け取ることができた、という認識は自分の遺伝子と自分の育った環境によって得られたものをわかりやすく統合することができます。

とはいえ、やはり揺れ動きます。「通常の」お子さんでもアイデンティティで悩むのですから、親が複数いるという状況は複雑にならざるを得ません。
また、里子の場合、実親との交流がある場合もあります。
その場合、お子さんの混乱が生じやすいこともあります。里親を本当は信頼しているものの、それを実親に伝わると怒ったり悲しんだりするので、わざと里親を攻撃するとか・・・

子供が大人に気を遣わないといけないこと自体、悲しいことです。
でも、現実ではそれはよくあります。
里親になった場合は、そういう子供の心理がわかるくらいの信頼関係を築くことが大切で、
何かあるときに相談できる窓口があることが必須となります。

子供が笑ったならそれが正解

実際にお子さんを迎えると、日々は過ぎていきます。
これでいいのだろうか、と疑問に思うことも多々あると思います。

そういう時、私は子供が笑ったなら、それが正解です、と伝えています。
子供がTVを見て笑ったなら、今のままで大丈夫。
幼稚園に行くときに行ってきますと言って笑ってくれたなら、今のままで大丈夫。
今日学校のテストで100点とったよ、と笑ってくれたなら、今のままで大丈夫。
子供の笑顔が今のままで正解なんだ、という目安にしてくださいね。

もし、この2,3日、笑った顔見てないな?と感じたなら、
何かあるのかもしれません。
最近、笑ってないね~という言葉をかけるだけでも良いです。
そうしたら、うん、なんか歯が痛いんだよね、と笑わない理由を教えてくれて、
歯医者にいけば正解、となるかもしれません。

ありのままのあなたでいられることがあなたの正解

不妊を経験し、里子、養子を迎えることを検討する瞬間はあるでしょう。

不妊を経て、里子、養子を迎えるために行動するカップルもいますし、カップルのどちらかが反対、あるいは賛成ではなく迎えることを断念するケースもあると思います。

実際に里子、養子を迎えたけれど、毎日が試行錯誤、覚悟はしていたがこんなはずじゃなかった、と思うことはあるでしょう。勿論、子育てができる喜びを日々味わっているカップルもたくさんいます。

里子を迎える、養子縁組をするためには多くの迷いや葛藤や不安があるでしょう。
決断はとても難しいです。
自分一人ならまだしも、カップル二人で決断することは本当に難しいです。

それでも、どのような選択をしたとしても、あなたがありのままでいられるのなら正解です。
カップルの価値観が違って、「思い通りではない」日々をすごしているとしても、
あなたがあなたの気持ちや考えを表現できる日々でいられるのなら
これまで選択した色々なことはあなたにとって、正解、なのです。

正解は人それぞれ。
思い通りであることが正解ではない、ということもポイントです。

もし、あなたが今、ありのままのあなたでないのなら何らかの改善やサポートが必要かもしれません。
ありのままの自分でいるかしら?という問いをしてみてくださいね。

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