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不妊治療の選択肢としての卵子提供

卵子提供で子供を授かることを検討している方々に様々な心理面についてお伝えします。

目次

卵子提供とは

卵子提供はどのように行われており、それによってどのようなことを心理的に知っておくべきにかについてお伝えします。

どのように卵子提供は行われるのか

赤ちゃんを授かりたいと思っていても、年齢や病気などが理由でなかなか恵まれない夫婦もいます。不妊治療の技術は進歩していますが、100%解決できるわけではありません。ただし、自分の卵子で妊娠できない場合でも、「卵子提供」を受けるという方法が残されています。卵子提供について、費用やリスクのほか、日本国内や海外で受けられるのかなどをご説明します。

卵子提供とは、その名のとおり、第三者から卵子を提供してもらって、体外受精などで妊娠を試みる方法です。

たとえば、病気による卵巣摘出や、早発閉経などで排卵がなくなってしまった人が卵子提供を受けます。体外受精を何回試みても妊娠できず、その原因が卵子にあると認められた場合にも行われることがあります。

ただし、年齢が高いことが理由で妊娠できない夫婦は、卵子提供を受けることができません。この判断は医師に委ねられており、妻の年齢が50歳以上であることが目安とされています。

そもそも日本では、卵子提供に関する法律や制度が十分に整っていません。不妊治療専門のクリニックなどが集まって、「JISART(日本生殖補助医療標準化機関)」という団体を作り、独自のガイドラインを定めて卵子提供を行っているのが現状です。

日本国内では、JISARTの卵子提供ガイドラインで決められた条件を満たしていると判断されれば、「卵子提供実施施設」で卵子提供を受けることができます。

しかし、親族や知人など卵子を提供してくれる人を自分たちで探す必要があるうえ、卵子提供を実施できる指定の医療施設が少ないといった課題もあり、日本国内では今のところ数十件程度しか実績がありません。


海外には不妊治療の一環で卵子提供を行っている国があり、卵子提供を受けるために日本から渡航する人もいます。日本人が卵子提供を受けている主な国として、アメリカやタイ、台湾などがあります。

日本国内には、海外での卵子提供をサポートするエージェントがいくつかあり、ドナーの選定や医師の紹介、渡航の手続きなどを請け負ってくれます。

海外渡航による卵子提供では、1~2回ほどの渡航で卵子提供者との契約や様々な検査を行い、体外受精による受精卵の移植を受ける必要があるので、1回の移植で通常3~4ヶ月ほどかかります。


JISARTが指定する日本国内の医療機関で卵子提供を受ける場合、事前検査やカウンセリングなどの諸経費だけで約100万円かかります。体外受精の胚移植など、卵子提供後の治療費は別途かかるので、全部合わせると1回あたり150万円程度の費用が必要です。

病院や治療内容によっても異なるため、あくまで参考程度に考えてください。

JISARTによると、2007~2017年の約10年間で、日本国内で実施された卵子提供は73件、そのうち生まれた子供の数は双子も含めて37人と、出産まで至る確率はほぼ50%です。

病気などが原因で卵子を作れない女性にとって、卵子提供は子供を授かるための希望の道といえます。日本国内での実績はまだ少ないですが、海外で卵子提供を受けることも可能です。

しかし、卵子提供を受けたあとは体外受精をすることになるので、双子や三つ子などの多胎出産になるリスクがあります。また、無事に出産した後には、「将来どのように子供に説明するか」といったことも考える必要があるかもしれません。

卵子提供に伴うリスクや費用などを踏まえたうえで、出産や子育て、子供の成長までを視野に入れて総合的に検討しましょう。

以上「卵子提供とは?費用やリスクは?日本で可能なの?」より引用(リンク参照)

卵子提供で子供を授かることの悩み

卵子提供によって子供を授かりたい、と思う理由は人それぞれだと思います。

早発閉経の方や子宮や卵巣に何らかの問題がある方、
不妊治療を行っているが原因不明で出産にいたらない方、
女性の年齢が40歳以上であることで妊娠・出産が難しい方、
など、が多いと思います。

出産を望む女性との血縁はないけれど、
出産し、育てることで「母親」になることを叶えるのが卵子提供です。

それは子供を望む女性にもカップルにも朗報となりえます。
ただ、想像すればすぐに予想できる「問題」も多々あります。

①お子さんとの血縁がないこと
それはお子さんの成長の上で重要な事実となります。
遺伝的な要素による病気や体質など、母親として関わることができないことが発生する可能性がありますので、
その際は卵子提供特有の難しさを感じるでしょう

②真実告知とお子さんのアイデンティティ形成に「普通」よりエネルギーを必要とすること
お子さんは母親とは似ていませんので、見た目からお子さんにとって自分は何者であるのか、が
揺らぎやすいです。また、真実告知をする際に、お子さんが健康的に受け入れられるかどうかも、とても配慮を必要とします。カップルで取り組むべき問題なので、カップルのコミュニケーションもとても大事です。

③周囲との関わり
お子さんとの関係は親子で努力することで良好になる可能性は十分ありますが、周囲との関係はとても複雑です。お子さんにとっての祖父母達は知っているのか、周囲は母親と似ていないことをどうとらえるのか、卵子提供者との関係はどうなのか、などなど、「自分達」だけで問題が解決しない難しさがあります。

④その他諸々
卵子提供は日本ではなかなか難しい状況です。海外では可能ですが、その分経済的な負担もあるし、
ドナーが日本人ではないこともあります。また、海外で行うがゆえの、複雑な手続きもあります。さらに、そういった悩みを気軽に相談できるところがないのが、悩みでもあります。そういう意味でも、カップルで意思決定ができるかどうかが、とても重要になります。


卵子提供を検討する際の3つのポイント

卵子提供により、子供を授かりたいと検討しているのであれば、
次の3つのポイントを確認すると良いでしょう。

生殖物語

子供が欲しいと思う時には、そこには生殖物語があります。

生殖物語についてはリンクを参照してくださいね。

あなたの生殖物語はどんなものですか?
卵子提供を考えるということは、本来の生殖物語の書き換えを余儀なくされているかと思います。
書き換えは辛い作業ですが、
実子を得ることができない事実を受け止め、しっかり悲しんだ上で、
卵子提供によって、あらたな生殖物語が始まり、
それがあなたにとって価値あるものになるのであれば、
卵子提供による挙児を検討してもよいでしょう。

ただし、パートナーの生殖物語も同様です。
同じように、本来の生殖物語と違うことに心の整理ができて、
生殖物語の書き換えを進めているようなら、
卵子提供により家族を作ることに喜びを感じることができるでしょう。

子供の幸せが最優先だと断言できる

以前には精子提供を考えるカップルにもお伝えしましたが、非配偶者間生殖医療を考える時は、生まれてくるお子さんの幸せを最優先する覚悟、決意が必要です。

養子や里子を迎える場合も同じく、お子さんの幸せのために「迎える」のですが、そのお子さん達の存在は養親や里親だけの責任ではありません。実親達の責任があります。

でも、非配偶者間生殖医療を選択し、お子さんの存在を生み出すのは決断をしたあなた達カップルです。
その責任は100%カップルのお二人にあります。(二人に、同等にあります)
ですから、お二人が生まれてくるお子さんの幸せを最優先にする覚悟と決意があれば、卵子提供によりお子さんを授かる選択をしても良いだろうと判断できます。

そして、そこにはお子さんへの真実告知も含まれます。真実告知をするしないはカップルで十分検討する必要がありますが、その決断がお子さんの幸せのためだけに行われることが大事です。

カップルの気持ちを丁寧に確認しあえる

上記したように、カップルが生まれてくるお子さんの幸せを最優先にできることが、卵子提供という選択肢を選んでも予想される様々な問題を乗り越えることができる判断材料となりますので、
常にカップルがお互いの気持ちや考えを確認しあえる関係であることも重要です。

人の気持ちは変わります。
それが当然です。
でも、それでいいし、変わりながらもそれを受け入れ、どう進んでいくかをカップルで常に話し合えることが
素晴らしいカップル関係を作ります。
そういう素晴らしいカップルの元に生まれたお子さんは幸せになるでしょう。
お子さんが幸せであればカップルも幸せですから、
卵子提供により家族を作ることを選択したことを誇りに思えるでしょう。

逆を言えば、カップルのコミュニケーションが乏しく、
前は○○言ってたのに、今は違うことを言うのはおかしい、
と思うのであれば、
カップルが足並みをそろえて卵子提供により生まれたお子さんの
幸せを最優先に考えられないだろうと思います。

子供を授かることは一人でできない難しさがここにもありますが、
それが子供を持つ、ということでもあります。


卵子提供を決めたなら

迷うこともあったり、不安なこともあったり、でも、卵子提供により子供を授かることを決めたのなら次のことを忘れないでください。

気持ちは絶対に変わる。だから常にサポートを求める

人間の気持ちは変わります。人間自身が成長するし、環境も変わるし、おそらく変化しないものはこの世にはないでしょう。

でも、今決断したことは、事実です。今、感じていることも、事実です。その事実を基に、次のステージに移行していきます。そして、できれば、自分にとって良い変化をどんどん続けていければ何よりです。

ただ、人生なかなか好転ばかりはいかないでしょう。そんな時は必ずサポートを求めてください。残念ながら現在の日本ではそれほど卵子提供、非配偶者間生殖医療、あるいは不妊に対するサポートは手厚くありません。

だから、余裕があるうちにサポート先を見つけておくことも重要になります。
そして、必要と思ったときにすぐにサポートを求める。
とくに真実告知に関しては悩むことが沢山あるでしょう。
そういう時も迷わずサポートを求めてください。

そうすることで、不必要な混乱を避けることができます。

お子さんの幸せを優先しつつ、パートナーと自分の思いを尊重することも忘れずに

卵子提供でお子さんを授かりたいなら、お子さんの幸せを最優先にしてください、とお伝えしましたが、それはパートナーの気持ちや自分の気持ちを抑える、我慢する、ということではありません。

勿論、抑える、我慢することが苦痛ではないのなら、それでもいいかもしれませんが、
それは本当にお子さんの幸せを願っていることにならないかもしれません。
(後になってあなたのために私は我慢したのよ、という気持ちになる可能性があります)

お子さんの幸せは最優先ではあるが、同時にパートナーや自分の思いも「尊重」することがコツです。
尊重、とはつまり、パートナーや自分がどう思うかを批判せずに受け止める、そしてその思いが実行可能かどうかを検討する、残念ながら実行可能ではない場合は、代替案を考えたり提案したり。あなたがそう思うことは間違っていないし、それでいいけど、今はその思いを達成できないので、達成できる他の形を探しましょう、というものです。

ものすごく難しいですよね!
でも、できます。不妊治療と違って努力は報われます。
(カウンセリングを利用するのも一つですが、お一人で取り組むこともできます)

卵子提供でお子さんを授かりたいのはなぜか?
自分を含めた家族全員が幸せであってほしいから、ですよね?
それであれば、家族の気持ちを尊重しつつ、
自分の気持ちを尊重することも忘れないでくださいね。

参考文献

卵子提供を考える際には、他にもいろいろと悩むこと、不安に思うこと、疑問があると思います。
参考文献を掲載しますのでお役に立てればと思います。

〇「非配偶者間人工授精生まれ人の自助グループ(DOG:DI Offspring Group)、長沖暁子著「AIDで生まれるということ、精子提供で生まれた子供たちの声」萬書房 2014

〇「大好きなあなただから、真実をはなしておきたくて 精子・卵子・胚の提供よりうまれたことを子供に話すための親向けガイド」オリビア モンツチ著 才村眞理訳 帝塚山大学出版会 2011 

〇甘粕りり子 「産まなくても、産めなくても」講談社
・卵子凍結、男性不妊、養子縁組など不妊の様々な側面を題材とした短編集

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